追悼 杉野保さん (2) ー クライミングのスタイル

岩に登った痕跡を残さず、岩を傷付けず、次のクライマーが何時でもゼロ状態から登ることができ、残置支点等人工物に頼らない、自然の摂理に沿って攀じ登る「トラッドスタイル」が、山岳(アルパイン)地帯で頂上を目指す登攀であろうが、里山のゲレンデであろうが、はたまたシークリフであろうと、僕のクライミングに対するスタイルだ、と云うようなことを所属する会のメールに書いたことがある。この原点は杉野さんからの影響を受けてのものだ。

以下、杉野さんのFFへの寄稿(登山研修) : 英国クライミングの現状 (2009年1月)から抜粋:
「その壁のそのラインを登ろうと考えたとき、プロテクションがとれそうもなかったらどうするか。熟考することなく安易にボルトに手を出してしまっては、山懐に飛び込んで自然と対峙するクライミングという行為の本質を考えたとき、それはあまりに安直すぎる。

 岩を傷つけない回収可能なプロテクションの可能性を探り、ラインを吟味し、時にランナウトも辞さない。ボルトを打つという行為によって岩を強引にこちら側に近づけるのではなく、自分たちができうる限りの手段をつくして岩に歩み寄る。岩とフェアに対峙する姿勢がそこにはある。」

以前から杉野さんのクライミングに対する考えに心酔していたが、この文章がかっこよく全てを語っていると思う。「ボルトを打つという行為によって岩を強引にこちら側に近づけるのではなく、自分たちができうる限りの手段をつくして岩に歩み寄る。岩とフェアに対峙する姿勢がそこにはある。」この文章かっこ良すぎ。

杉野さんのFFへの寄稿(登山研修) : 英国クライミングの現状 (2009年1月)

http://cliff.world.coocan.jp/story/uk.htm